それぞれオーダーし、水を啜る。

「定価の半分でも、手届かなくない?」

 コトンとグラスを置いて、頬杖をつくわたし。みっちゃんはまだ、グラスから口を離さない。

「彼氏できたならできたって教えてほしいよ。それとも高校生になって、バイトでも始めたの?」

 山内くんは週に三日ほど、コンビニでバイトをしていると言っていた。それでも日頃散財してしまって、中々ほしいものが買えないとも。

「みっちゃん、聞いてる?」

 だからわたしは不思議なんだ。高校生になってからいきなり派手になったみっちゃんが、唐突に金回りがよくなったように見えるみっちゃんが。余計なことには口出さないけれど、もしそこに隠し事があるならば、それはちょっと寂しいよ。

 長いこと口をつけていたグラスをテーブルに置いたみっちゃんは、ゆらゆら揺蕩(たゆた)水面(みなも)を眺めて、その中に言葉を落とす。

「胡都はさ、人生なにで満たされる……?」
「え」
「愛?それとも、お金?」

 わたしを見ないみっちゃんのか細いその声は、独り言のようだった。まるで、自分自身へ問いかけているのかと思うほど。

「え、えっと……」
「わたしは胡都みたいに誰かに愛されたことないし、やっぱりお金かなあ」

 いつもの明るいみっちゃんが、その刹那だけ消滅した。