「どうしてみっちゃんが、そんな高い服持ってるの?」

 幼少期から親しいみっちゃん。彼女の家が富裕層ではなく、そして娘に甘い両親を持っていないことも知っている。

「やっぱり、歳上の恋人でもできた?」

 みっちゃんの誕生日は三月末だ。他の祝い事もないこの季節にそんな高額なプレゼントをしてくれる彼女の恋人は、もしかすると社長さんくらいのレベルなのかもしれない。
 疑いの目を向けるわたしに、みっちゃんは軽く「まさかあ」と言うと、メニューをぱらぱら捲り出す。

「古着だよ、古着っ。定価の半分もいかないよ。お、紅芋タルトも美味しそうっ。これにしよっと」

 即決し、わたしにメニューを手渡す彼女。わたしの心はもう、看板にでかでかと書かれていた秋季限定サツマイモミルフィーユで決まっていたのだけれど、開かれたそのページにいちごが乗せられたモンブランが見えて、変更した。