十月に入り、季節は進む。シャツの上はブレザーだけでは寒いから、その間にベストを挟む日も増えた。
「なに、それ」
「きゃ!えっち!」
とある日の放課後。地元の駅前で目にした『秋季限定サツマイモミルフィーユ』の看板に唆られて、みっちゃんとふたりでカフェに入ると、暖房が効きすぎた店内に「暑い」と言った彼女がベスト姿になったから、気になる箇所へ指をぐりぐり押しあてた。その部分がちょうど胸だったからか、彼女は悲鳴を上げて驚いていた。
「いきなりなによもう!胡都の変態っ!」
パシンと払われたわたしの手。それでそのままビシッとさすのは胸元のワンポイント。
「なにそのマーク。それってあれだ、定価五万円くらいするやつだっ」
つい先日、母と出かけた帰り道に、夕ご飯は楽にしようと立ち寄ったデパ地下。そこで知り合いに遭遇した母が井戸端会議を始めるものだから、わたしはファッションフロアで暇を潰していた。その際見つけたのは、学生にも似合いそうなシックなデザインのベスト。手に取り鏡で合わせてみたが、その値札を見てすぐさま棚へと戻した。
ゼロがひとつ多かった。一番左端にある数字で、これは学生向けの商品ではないと感じた。それなのに。
「なに、それ」
「きゃ!えっち!」
とある日の放課後。地元の駅前で目にした『秋季限定サツマイモミルフィーユ』の看板に唆られて、みっちゃんとふたりでカフェに入ると、暖房が効きすぎた店内に「暑い」と言った彼女がベスト姿になったから、気になる箇所へ指をぐりぐり押しあてた。その部分がちょうど胸だったからか、彼女は悲鳴を上げて驚いていた。
「いきなりなによもう!胡都の変態っ!」
パシンと払われたわたしの手。それでそのままビシッとさすのは胸元のワンポイント。
「なにそのマーク。それってあれだ、定価五万円くらいするやつだっ」
つい先日、母と出かけた帰り道に、夕ご飯は楽にしようと立ち寄ったデパ地下。そこで知り合いに遭遇した母が井戸端会議を始めるものだから、わたしはファッションフロアで暇を潰していた。その際見つけたのは、学生にも似合いそうなシックなデザインのベスト。手に取り鏡で合わせてみたが、その値札を見てすぐさま棚へと戻した。
ゼロがひとつ多かった。一番左端にある数字で、これは学生向けの商品ではないと感じた。それなのに。