わたしは山内くんのことを好きではない。だから、申し訳ない気持ちで付き合っている。そのはずなのに。
「だからもう、無理しなくていいってば山内くん」
「ま、まだ平気っ」
「平気って言ってる時点で、なんかもう、フードファイターみたいになっちゃってるからっ」
大きなパンケーキを、彼と一緒に八割ほど食して気付くのは、今日はなんだか楽しいってこと。
「おっかしいなあ。いつもはもっと俺、大食いなのに。今日は満腹中枢の調子が悪い」
「水の飲みすぎだよ。それで何杯目?」
「えっと、五杯?」
「ほらっ」
そう指摘したそばから、またもやグラスを手に持つ山内くん。レモンの酸味で口内の甘みを和らげようとしているのは、バレバレだ。
「よし、あとちょっと」
「もう残そうよお」
「そんなことしたら、いちご農家の人やお店の人に悪いだろ」
「んー、そっか」
その後、時間をかけて残りの二割をふたりで頬張っている最中も、話題に困ることはなく、スムーズに会話ができた。何を喋ろうかと考えずとも、春に草木が芽吹くようにぽんぽんと出てくるトピック。その大概は山内くん発信だけれど、わたしもたまには出した。
山内くんとふたりきりにされても困るし。
そんな思いが心から消滅していくさまを、彼と話しながら感じていた。
「だからもう、無理しなくていいってば山内くん」
「ま、まだ平気っ」
「平気って言ってる時点で、なんかもう、フードファイターみたいになっちゃってるからっ」
大きなパンケーキを、彼と一緒に八割ほど食して気付くのは、今日はなんだか楽しいってこと。
「おっかしいなあ。いつもはもっと俺、大食いなのに。今日は満腹中枢の調子が悪い」
「水の飲みすぎだよ。それで何杯目?」
「えっと、五杯?」
「ほらっ」
そう指摘したそばから、またもやグラスを手に持つ山内くん。レモンの酸味で口内の甘みを和らげようとしているのは、バレバレだ。
「よし、あとちょっと」
「もう残そうよお」
「そんなことしたら、いちご農家の人やお店の人に悪いだろ」
「んー、そっか」
その後、時間をかけて残りの二割をふたりで頬張っている最中も、話題に困ることはなく、スムーズに会話ができた。何を喋ろうかと考えずとも、春に草木が芽吹くようにぽんぽんと出てくるトピック。その大概は山内くん発信だけれど、わたしもたまには出した。
山内くんとふたりきりにされても困るし。
そんな思いが心から消滅していくさまを、彼と話しながら感じていた。