胡都を頼んだよ、山内くん。

 そう言って、俺は彼を呼び止めた。
 え、と驚き振り返った彼だけれど、程なくして手を合わせてくれた。

「秋宮、俺はもう一度胡都を掴みにいく。お前の分まで胡都を幸せにする、笑顔を作ってみせる。悲しい思いなんて、もう絶対にさせない」

 墓石に向かってそうはっきりと言ってくれた彼。下の名も知らない他人を、こんなにも頼もしく感じたのは初めてだった。

「笑顔の胡都を連れて、またここに会いにくるよ」

 だから彼になら、胡都を任せられると思ったんだ。

 自分で絶ってしまった命を今更悔やんでも仕方ないけれど、俺と彼がもし生前に出逢っていたとしたら、良きライバルであり良き友人になっていたかもしれない。

「じゃあな秋宮、また話そうぜ」

 墓を去る背中に、俺はこう呟いた。

 ありがとう、山内くん。どうか幸せに、ふたりとも。