「そういえばさ」
前置きをしたみっちゃんが、コートの袖を捲って見せてきたのは彼女の手首。
「これ、武藤にもらったんだけど」
そこにはブランドものでも何でもない、女子中高生が好みそうなきらきらしたブレスレットがついていた。
アクセサリー、ですか……でもそんなに仲の良くないぼくが贈っても、身につけてはくれないですよね……
大きな車輪の自転車に跨りながら、そんなことを言っていた武藤くんだったけれど、やっぱりアクセサリーにしたんだ、と思うと同時、みっちゃんがそれを早速身につけたことに驚いた。
「いいじゃん、みっちゃん似合う」
「そう?」
「ちなみに武藤くんとも、お似合いだったりして」
「はあー?」
顔の前、「それはないっ」と大きなバッテンを作るみっちゃん。しかし緩んでいた口元を、わたしは見逃さなかった。
「みっちゃん笑ってるよ」
「わ、笑ってない」
「えー、笑ってるよお」
「だって武藤のっ」
何かを言いかけて、そのふにゃけた口を覆う彼女。「なになに」と聞くと、くぐもった声でこう返された。
「武藤のメガネとってみたら、ちょっとタイプだった」
まだ赤にもピンクにも染まらないみっちゃんの頬。けれど彼女が身近にある恋に気付き、そして恋をする未来はそう遠くはないと思った。
前置きをしたみっちゃんが、コートの袖を捲って見せてきたのは彼女の手首。
「これ、武藤にもらったんだけど」
そこにはブランドものでも何でもない、女子中高生が好みそうなきらきらしたブレスレットがついていた。
アクセサリー、ですか……でもそんなに仲の良くないぼくが贈っても、身につけてはくれないですよね……
大きな車輪の自転車に跨りながら、そんなことを言っていた武藤くんだったけれど、やっぱりアクセサリーにしたんだ、と思うと同時、みっちゃんがそれを早速身につけたことに驚いた。
「いいじゃん、みっちゃん似合う」
「そう?」
「ちなみに武藤くんとも、お似合いだったりして」
「はあー?」
顔の前、「それはないっ」と大きなバッテンを作るみっちゃん。しかし緩んでいた口元を、わたしは見逃さなかった。
「みっちゃん笑ってるよ」
「わ、笑ってない」
「えー、笑ってるよお」
「だって武藤のっ」
何かを言いかけて、そのふにゃけた口を覆う彼女。「なになに」と聞くと、くぐもった声でこう返された。
「武藤のメガネとってみたら、ちょっとタイプだった」
まだ赤にもピンクにも染まらないみっちゃんの頬。けれど彼女が身近にある恋に気付き、そして恋をする未来はそう遠くはないと思った。