「けっこう大きそうだから、シェアして食べようか」
週末。山内くんに誘われて、来店したパンケーキ屋さん。隣の客席に運ばれてきた、ボリューミーな品を見て、彼は言う。
「一種類しかオーダーできないから、胡都が食べたいの食べようよ。どれがいい?」
はいっとこちらにメニューを向けられて、わたしは戸惑う。
「そんなの悪いよっ。ふたつ頼もう?」
「だって胡都、絶対食べきれないでしょ」
ちらっと横目で隣の席を見る山内くん。その視線を辿れば、確かにと思ってしまう。
「でも……」
メニューを見渡す。そこに載っているのは、甘党な人間が喜びそうなものが多いけれど、隅には『おかずパンケーキ』という枠もあって、四角で囲まれた中、目玉焼きやベーコン、しらすや大葉を使った、絶対に甘くなさそうな商品が表記されていた。
わたしはいちごがふんだんに使用された、その名も『いちご畑スペシャル』が食べたい。けれど甘党ではない山内くんとシェアするならば、やはりこれだろう。
「じゃあこの、半熟卵とアボカドのパンケーキにしようよ」
とんとんとメニュー表の隅を指で示し、そう言えば。
「やだ」
と、即刻拒否された。
「え」
「なにそれ。絶対胡都の食べたいやつじゃないじゃん」
「そ、そんなことないよ。わたし、アボカドも好きだし……」
「『も』ってことは、そのメニューの中に、もっと食べたいやつがあるんでしょ?ってか『いちご畑スペシャル』でしょ?さっきからずっとそこばっかり見てるじゃんっ」
全てを見透かされて、途端に恥ずかしくなる。遠慮がちに頷けば、山内くんが吹き出した。
週末。山内くんに誘われて、来店したパンケーキ屋さん。隣の客席に運ばれてきた、ボリューミーな品を見て、彼は言う。
「一種類しかオーダーできないから、胡都が食べたいの食べようよ。どれがいい?」
はいっとこちらにメニューを向けられて、わたしは戸惑う。
「そんなの悪いよっ。ふたつ頼もう?」
「だって胡都、絶対食べきれないでしょ」
ちらっと横目で隣の席を見る山内くん。その視線を辿れば、確かにと思ってしまう。
「でも……」
メニューを見渡す。そこに載っているのは、甘党な人間が喜びそうなものが多いけれど、隅には『おかずパンケーキ』という枠もあって、四角で囲まれた中、目玉焼きやベーコン、しらすや大葉を使った、絶対に甘くなさそうな商品が表記されていた。
わたしはいちごがふんだんに使用された、その名も『いちご畑スペシャル』が食べたい。けれど甘党ではない山内くんとシェアするならば、やはりこれだろう。
「じゃあこの、半熟卵とアボカドのパンケーキにしようよ」
とんとんとメニュー表の隅を指で示し、そう言えば。
「やだ」
と、即刻拒否された。
「え」
「なにそれ。絶対胡都の食べたいやつじゃないじゃん」
「そ、そんなことないよ。わたし、アボカドも好きだし……」
「『も』ってことは、そのメニューの中に、もっと食べたいやつがあるんでしょ?ってか『いちご畑スペシャル』でしょ?さっきからずっとそこばっかり見てるじゃんっ」
全てを見透かされて、途端に恥ずかしくなる。遠慮がちに頷けば、山内くんが吹き出した。