「てっきり山内と帰ると思ったのに。恋人記念日、わたしとなんかと帰ってていいの?」
「なんか山内くん、お昼ご飯は一緒にできないみたい」
「なんで」
「知らなあい」

 昼休みを跨がない、普段より早めの放課後の帰り道。こつんと足元に転がっていた小石をひとつ蹴って、わたしは隣で歩くみっちゃんの腕をとる。

「ネットで知り合ったおじさんと会うのは止めないけれど、ホテルとかカラオケとか、ふたりっきりになれちゃう場所にはもう行かないでね」

 ずいと真剣な顔を近付けてそう言えば、彼女も「わかってる」と真面目顔。

「昨日でもう懲りたよ。わたしが浅はかだった。ホテルで景色眺めるくらいどうってことないじゃんって思ってたけど、いざ密室でそんなに親しくない人とふたりだけになっちゃうと、怖いものだね」
「車の助手席とかもだめだよ?」
「わかってる」
「タクシーも念のためやめて。運転手の人とグルだったら連れ去られちゃうから」
「はいはい」

 うちのお母さんよりお母さんみたい、と彼女は呆れ笑うけれど、わたしは本気で心配なんだ。友達を失うなんて、もう二度と経験したくない。