多少の雑談時間を終え、各々席に着き、ツッチーの話をなんとなく耳にすればあっという間に放課後は来た。

「山内くん。今日って空いてる?」
「うん。空いてるけど」
「夜は家族でクリスマスパーティーなんだけど、昼間はうち、仕事で誰もいないの。だからさ、えっと、もしよかったら……」

 えーっと、とその続きを口にできず、もじもじするだけの胡都。彼女がよく一緒にいるメンバーのふたりが、明け透けな「頑張れ」を口にしているのが教室の廊下側に見えた。あのふたりはもう俺等の関係を知っているのだろうか。だとしたら、女子の情報網には脱帽だ。

 根本がにやにやしながら、敢えて俺の机の前を通る。

「じゃあな山内、伊吹さん」
「おう」
「メリクリ&良いお年を&ハッピーニューイヤー」

 今日から年明けに関わる挨拶を早口で言い残した根本には、胡都の緊張が解れていた。

「ふふふっ。相変わらず面白いね、根本くん」
「そうかあ?今の全然笑えなかったけど」
「全部、ふたりで一緒に過ごしたいね」

 きらきらと、目の前で真珠が輝いた。煌びやかで、(まばゆ)くて。けれどこの輝きに、俺が目は細めることは決してない。

「だからまずは今日のお昼、うちでお祝いしない?」

 宝石のような胡都の笑顔。ここがまだ誰もいない保健室だったら、俺はもう一度彼女の唇を奪っていただろう。