胡都とふたりで教室へ戻ると、一年一組の皆もちょうど、終業式から戻ってきたところだった。

「あ、美智」

 胡都にひた隠しにしていたことを洗いざらい喋らせてしまった彼女にひとこと言おうと駆け寄るが、ぱちっと投げられた一度のウインクで俺は止まった。

 気にしないで、山内が悪いんじゃないし。

 瞑った片方の目とにっと上げた口角で、美智のそんな思いが伝わったから。

「胡都は美智の秘密を知って、どう思ったの?」

 心配で気が気じゃない、だなんて言われたらどうフォローしようか。と考えながら聞くと。

「もう十何年も幼なじみやってるのに、気付けなかった自分と内緒にしてたみっちゃんにムカついちゃった」

 と、意外なことをむくれ顔で言った胡都。木の実を詰め込むリスみたいに膨らんだ頬を指で突ついて、俺は言う。

「美智は胡都に心配かけたくなかったんだよ。実際、心配しちゃってるでしょ?」
「そりゃ心配するよ、あたり前だよっ。あとでもう一回ちゃんと話してくる」
「ははっ。そうだな」

 ホテルの一件で、警戒心をじゅうぶんに抱いたとは思うけれど、親友である胡都からの「気をつけて」の方が、もしかしたら美智には効き目があるのかもしれない。