「メリクリ二日目〜!今日で学校終わって冬休みだな、っておい!」

 翌朝の通学路。ズザザ!とアニメの如く後退ったのは、俺の顔面を見た根本。

「な、なにそれ……」
「なにが」
「ボロ負けしたボクサーみたいになってんぞ……」

 カシャッとスマートフォンで写真を撮られ、彼に見せられたものは、双眸ぷっくり腫れ上がった己の顔。

「うわ、ひっでえ」
「喧嘩でもしたんか山内」
「いや、実は」

 実は一晩中泣いちゃって、だなんて恥ずかしいことは伏せ、俺は不良を演じてみせる。

「そうそう、ちょっと他校のやつとやり合っちゃって」
「うっわ、まじかよ」
「こんな顔ツッチーに見せたらどうせ根掘り葉掘り聞いてくるに決まってるから、ちょっと治してから行くわ」
「治す?」
「保健室で、冷やしてから行く」

 じゃああとで、と根本とは下駄箱で別れ、俺は一階の保健室へ向かう。

「西条先生ー?」

 しかしまだ登校の時間帯だからか、そこに西条先生の姿はなし。氷嚢の場所も氷の場所もわからぬ俺は、ひとまず空っぽなベッドへお邪魔した。