「山内、ごめんね」
駅への道すがら、美智が俺の服を摘む。
「山内何回も行くなって止めてくれてたのに、結局こんなんなっちゃって……」
未だに潤む彼女の瞳。よっぽど怖かったのだろうと思う。
「いいよ、無事だったから」
ほら見ろ、と叱咤する気満々だったはずななのに、弱っている美智には早く元気を出してほしい気持ちが勝ってしまい、できなかった。
「わたし、愛っていう感情が欠落してるんだと思う」
やおらに立ち止まった美智が、ひょんなことを言ってきた。
「うちの親ね、あまりわたしに興味がないの。兄弟もいないし、ひとりでずっと過ごしてきたから、愛する愛されるってなにかわからなくて、段々とお金で満たされるようになっていった。人より良いもの身につけて、自分着飾っていれば、満足した気になるんだ」
満足だとか言うわりには、俺には美智が切なげに見えた。
「それが、パパ活に手ぇ出した理由?」
「そう。今日みたいなことにはなりたくないから、これからは慎重に続けてくつもり」
「ふうん。まあ、俺はどっちでもいいけど」
けどひとつだけ、はたから見えたことを伝えたい。
「少なくとも美智がいつも絡んでる仲間は、美智のこと愛してんじゃねえの?」
「え」
「いるじゃん、いつもわいわいしてる四人組。今日すっごい心配されてたぞ、みんなに。それって愛されてる証拠じゃん」
それに、ともうひとつだけ俺は加える。
「美智だって胡都を愛してるから、秋宮のことで苦しむ胡都を助けられたんだろ」
そんなん愛でどうにかなるもんよ。
さっぱりとした言い方だったけれど、姉貴がくれた言葉は今でも心に残っている。
「愛が欠落してるんじゃないよ、美智は。愛が身近にない生活だったから、愛に気付きづらいだけだ」
ビシッと指をさし、決めてみる。そんな俺を「偉そうに」と笑った後、美智は茜色に染まりいく空を見上げていた。
「そっか。わたしの側にも愛はあるんだ……」
駅への道すがら、美智が俺の服を摘む。
「山内何回も行くなって止めてくれてたのに、結局こんなんなっちゃって……」
未だに潤む彼女の瞳。よっぽど怖かったのだろうと思う。
「いいよ、無事だったから」
ほら見ろ、と叱咤する気満々だったはずななのに、弱っている美智には早く元気を出してほしい気持ちが勝ってしまい、できなかった。
「わたし、愛っていう感情が欠落してるんだと思う」
やおらに立ち止まった美智が、ひょんなことを言ってきた。
「うちの親ね、あまりわたしに興味がないの。兄弟もいないし、ひとりでずっと過ごしてきたから、愛する愛されるってなにかわからなくて、段々とお金で満たされるようになっていった。人より良いもの身につけて、自分着飾っていれば、満足した気になるんだ」
満足だとか言うわりには、俺には美智が切なげに見えた。
「それが、パパ活に手ぇ出した理由?」
「そう。今日みたいなことにはなりたくないから、これからは慎重に続けてくつもり」
「ふうん。まあ、俺はどっちでもいいけど」
けどひとつだけ、はたから見えたことを伝えたい。
「少なくとも美智がいつも絡んでる仲間は、美智のこと愛してんじゃねえの?」
「え」
「いるじゃん、いつもわいわいしてる四人組。今日すっごい心配されてたぞ、みんなに。それって愛されてる証拠じゃん」
それに、ともうひとつだけ俺は加える。
「美智だって胡都を愛してるから、秋宮のことで苦しむ胡都を助けられたんだろ」
そんなん愛でどうにかなるもんよ。
さっぱりとした言い方だったけれど、姉貴がくれた言葉は今でも心に残っている。
「愛が欠落してるんじゃないよ、美智は。愛が身近にない生活だったから、愛に気付きづらいだけだ」
ビシッと指をさし、決めてみる。そんな俺を「偉そうに」と笑った後、美智は茜色に染まりいく空を見上げていた。
「そっか。わたしの側にも愛はあるんだ……」