「あのさ、おっさん」

 丸腰の彼にかけていた体重を退かし、俺はベッドに腰掛ける。

「ネットで知り合った女子高生と遊ぶのは勝手だよ。だけどさ、も少し場所を選ぼうよ。学校休ませたりしちゃったらさ、あの子のこと心配するやつがたくさんいるんだよ。そういうのはもう、やめてくんないかな」

 ポケットからスマートフォンを取り出し、適当な画像をタップする。

「次からは人目につくとこで会ってください。もうあの子に怖い思いさせないでください、お願いします。じゃないとおっさんの風呂上がり画像、拡散しちゃうから」

 上半身裸な自身の姿に、ひいっと蒼白する彼の顔。

「わ、わかった」
「ん。じゃあ、今日はもうあの子連れて帰ります。手荒な真似してすみませんでした」

 あれだけ怒り心頭に発しておいて、理にかなう彼の言い分と従順さに、美智が彼を良い人だと言う気持ちも少しわかった。

「美智、帰ろ」
「う、うん……」

 ことの一部始終を部屋の隅で見届けた美智は、俺の腕を支えに立ち上がると、彼の方を見てこう言った。

「おじさん、今日はごめんね。なんか最後、ビビっちゃって……いっつもありがとねっ」

 その言葉に、彼は何も返さなかった。呆然状態の彼ひとりをベッドの上へ残し、カチャンと閉める部屋の扉。
 夕刻に入った表へ出ると、空が茜色に染まるよりも先に、街がネオンを纏っていた。