二十四日、クリスマスイブの朝は姉貴の笑顔で起こされた。無論、彼女は亡くなってしまっているから、夢の中でだけど。
 久しぶりに見た姉貴の夢。天国から何かを知らせてくれているのかもしれないと思えば、尋常ではないほどの胸騒ぎがした。

『美智、今日は学校来いよな?おじさんとホテルなんか行くな』

 そんなメールを送信して登校したけれど、クラスに美智は不在。ただの遅刻でありますようにと願いながら、授業の合間合間に電話をしたが、全て彼女は無反応。胸騒ぎは止まらない。

「おい、生きてんのっ?」

 ようやく美智と連絡がとれたのは、帰りのホームルームが終わってすぐ。この日何度も鳴らした呼び出し音がプツッと切れた瞬間にベランダへダッシュし、まず俺が確認したのは彼女の生死。しかし彼女の命が脅かされてはいないかと気が気ではない俺に反し、返ってくるのは明朗な声。

「なに言ってんのよ山内、生きてるに決まってんじゃーんっ。てかそれより着信寄越し過ぎっ。映画の最中ブーブーいってたの、全部あんたでしょ」

 美智の声に混ざってした喧騒と、華やかなクリスマスソングのBGMが、今彼女のいる場所がホテルの一室ではないと知らせてくる。

「今どこいんの、もう帰って来いよ」
「え、やだよ。これからちょっとアクセ買ってもらって、んでホテル行くし」
「そんなのもう、どうでもいいじゃんか!」

 女子高生に望むものを買い与え、信頼を得てるだけかもしれない。そんな考えが微塵も浮かばない美智に、俺は苛立った。