「どうしてこう、この子も知らない大人について行くかなあ。美味い飯だ高いバッグだって買ってもらったって、結局殺されたらどうしようもないじゃないか」

 苦虫を噛み潰したような顔をした父親が嘆いたのは、十二月二十三日の夜だった。

「稜も変な事件に自ら巻き込まれに行くなよ。小さなスマホの中の世界のことは、父さんたちも把握しきれないから。自分で判断しろ」

 そう言って、食卓へ無造作に放られた新聞紙がスライドし、俺の前へ来た。父親が気分を害したであろう記事を読む。

『女子高生をホテルで殺害。出会いはネットか』

 見出しだけで震撼させられたのは、美智との会話を思い出したから。銚子旅行の帰りの電車内。胡都と根本がトイレへ立ち、ふたりきりになった際に交わしたあの会話を。