ガラッとベランダの扉が開いたのは、それからどのくらいの時間が経ってからだろうか。十秒も経過していなかったかもしれないし、もしかしたら三時間ほど過ぎていたかも。なんて、時間の計算もできなくなるほど、わたしは憤りを感じていた。
静かな怒り。こんな感情、初めてだ。
「わ、胡都っ。そんなとこでなにやってっ」
窓際の一番後ろにある自分の席ではなく、教室前方の黒板横でしゃがみ込むわたしに気付いた山内くんは、扉に手をかけたまま驚いていた。スマートフォンは手元にない。おそらくもう、みっちゃんとの通話は終わり、ブレザーのポケットの中だろう。
「山内くんこそ、ベランダでなにしてたの」
上手く顔を上げられなくて、わたしはそのポケットを見つめて言った。
「今日は一緒にクリスマスケーキ食べに行く約束だよね。早く行こうよ……」
どうしても、震えてしまう声。山内くんの顔が見られない。
わたしたち以外誰もいない教室に、ベランダの扉が閉まる音が響く。
「ごめん胡都。俺、今日行けない」
静かな怒り。こんな感情、初めてだ。
「わ、胡都っ。そんなとこでなにやってっ」
窓際の一番後ろにある自分の席ではなく、教室前方の黒板横でしゃがみ込むわたしに気付いた山内くんは、扉に手をかけたまま驚いていた。スマートフォンは手元にない。おそらくもう、みっちゃんとの通話は終わり、ブレザーのポケットの中だろう。
「山内くんこそ、ベランダでなにしてたの」
上手く顔を上げられなくて、わたしはそのポケットを見つめて言った。
「今日は一緒にクリスマスケーキ食べに行く約束だよね。早く行こうよ……」
どうしても、震えてしまう声。山内くんの顔が見られない。
わたしたち以外誰もいない教室に、ベランダの扉が閉まる音が響く。
「ごめん胡都。俺、今日行けない」