起床し、家を出る前までに、誰だって一度は鏡を見る。わたしはその瞬間が大嫌い。

「一体いつになったら、秋宮くんに線香あげに行くの?」

 今日も鏡の中の自分は、あの日をしっかりとわたしに思い出させてくる。

「秋宮くん、あなたが来るの待ってるよ。早く行ってあげなよ」

 ばいばい、胡都。一生俺を想っててよ。

 夢を見ようが見なかろうが、彼の最期の瞬間は瞼の裏にべたりと貼り付いていて、目覚めたわたしの視界に残像を映す。それと鏡が重なれば、わたしはいつだって、己で己を(くさ)したくなるんだ。

「あなたのせいだよ、胡都」

 今日もわたしは自分へそう言い放って、玄関を出た。