「みっちゃんまだ来ないね」

 クリスマスイブ。朝のホームルームに現れなかったみっちゃんは寝坊したのだと、勝手にそう決めていたけれど、三限目を終わっても顔を出さぬ彼女に、わたしも萌ちゃんもゆっぴーも心配し始めた。

「ゆっぴーの電話、出ないの?」
「全然」
「萌ちゃんの送ったメールは?」
「返信ないよ」

 ふたりの返答に、「どうしたんだろう」と呟けば、ゆっぴーがわたしに聞いてくる。

「っていうか、胡都はなんで美智に連絡しないの?」
「え」
「まだこの前のお昼のこと、引きずってんの?」

 スマートフォンに夢中になり、わたしの嬉しい報告を聞いてはくれなかったみっちゃん。

「引きずってるっていうか……」

 すぐにごめんと謝ってくれたけれど、わたしが不愉快になった原因はそこじゃない。

 半端に言葉を切ったわたしを、萌ちゃんとゆっぴーは根に持っていると判別したらしく、「まあまあ」だなんて声をかけてきた。

「もういいじゃん、美智も悪気はなかったんだから」
「わたしもたまにあるよ、スマホ弄ってて友達のこと無視しちゃう時。きっと美智も、反省してるよ」

 そう思わない?と萌ちゃんのふわりとした口調で同意を求められて、うっかり頷いてしまうわたし。

「ふふっ。じゃあ、美智にメールしてあげて。みんな心配してるよーって」

 けれど素直にはなりきれず、わたしがみっちゃんに連絡することはなかった。