「みっちゃんは、甘いもの好きだよ。興味があるのはいっぱいあるけど、きらきらしたものとか、アクセサリーは特に好きかも」

 そんな武藤くんに一歩近寄りそう言うと、彼は困った。

「アクセサリー、ですか……でもそんなに仲の良くないぼくが贈っても、身につけてはくれないですよね……」
「う〜ん……」

 それは値段によるかも、なんてみっちゃんの株を下げる発言は控えて、わたしは「どうだろう」と曖昧に濁す。

「わかりました。伊吹さん、教えてくれてありがとうございます」

 そう言った武藤くんは前傾姿勢になり、ペダルを漕ぐ準備。

「今からちょっと、色々なお店見てまわってみます」
「お店って行っても、この辺だとあまり可愛いお店ないよ?電車に乗らないと、自転車じゃ大変じゃない?」
「大丈夫ですよ。このロードバイク、速いんで」

 では、と礼儀正しく頭を下げて、颯爽と走り去っていく武藤くん。彼の背中にみっちゃんへの大きな愛が見えて、わたしは思わず応援したくなった。けれど。

 愛よりお金。

 みっちゃんの言葉が脳裏を()ぎり、複雑な気分になる。山内くんとのクリスマスデートが決まったのだと告げなかったあの日から、みっちゃんとは気まずいまま。彼女の不可解な発言も行動も問いただせずに、今に至ってしまっている。

「山内くんは、なにか知ってるんだろうなあ……」

 みっちゃんと山内くんが一緒に隠し事をしているならば、それはとても悲しいと思った。