チラシに釘付けになっているわたしに、山内くんが言う。

「この前行った時は俺、胡都に悲しい思いさせちゃったから。だからそのリベンジがしたくて」
「悲しい思い?」
「ほら、怒鳴ったり手に赤い痕残しちゃったり。まじであれ、反省してる」

 その日のことは、覚えている。二度目の告白をしてくれた山内くんへ、剣崎先輩と付き合っていることを伝えた日。
 わたしを危ない目に遭わせまいと、一生懸命訴えたのにもかかわらず、首を横に振り続けるわたしに山内くんは怒った。彼がほとんどを支払ったスイーツの大半を残して店を出て、それなのに、家まで送ってくれて。

「わたしもあの日のこと、ずっと悪いなって思ってた」

 ショートケーキから目を外し、上目で彼を見た。

「パフェ残してごめんね、山内くんの意見聞かないでごめんね。家の前で、号泣しちゃってごめんって」

 物憂げな彼の表情。その瞳に、同じような顔をした自分が映っていた。

「クリスマスイブに、わたしもリベンジしたいっ」

 けれど前のめりでそう言うと、山内くんもわたしも目の色が変わる。

「イブの放課後、楽しみにしてるっ。あの場所をもう一回、楽しい思い出で塗り替えようよっ」

 色が明るくなったわたしの目からは、きらきらとしたビームが放たれていたかもしれない。そしてそのビームにくすぐったさを感じたから、きっと山内くんは仰々(ぎょうぎょう)しく笑ったんだ。

「俺も超、楽しみにしてるっ」

 ああ。やっぱりわたし、この笑顔が好きだ。