「胡都っ」
「おいっ」

 すぐに寄り添ってくれた、みっちゃんと山内くん。その温もりがあるから、わたしは言葉を紡いでいける。

「ごめんね、秋宮くんっ」

 顔を上げた先の青い空、墓地の空。亡くなった人々が見上げる空は、こんなにも綺麗に澄んでいた。

「あの時のことずっと後悔してるっ。もっと言葉を選べばよかった、もっと他の言い方があったって。だけど、だけどもし秋宮くんにも心残りがあるなら、もうこれで、これで終わりにしようよっ」

 彼と喧嘩をしているわけではない。でもわたしは。

「わたしは秋宮くんと、仲直りがしたいっ!」

 彼と仲良く終わりたい。

 墓石へと握手を求めるように差し出した手は、風に吹かれて(かじか)むだけ。けれど、わたしだけには見えたんだ。

 幸せになれよ、胡都。

 そう言って、わたしの手をとってくれた秋宮くんが。
 (しか)と握った彼の手は感触もなく、無論存在だってしていないから、わたしの手はグーのかたちになっただけ。その拳を長いこと見つめて、おもむろに(ひら)いたその瞬間、そこにふたつの手が乗った。

「胡都、頑張ったね」
「秋宮のやつ、今頃有頂天だな」

 ふふっと微笑むみっちゃんに、ははっと笑う山内くん。ふたりに支えられながら立ち上がり、深く息を吸えば、なんだかとても、清々しい気持ちになった。

「ありがとう、ふたりとも」

 立てた線香の火が、真っ直ぐ天へと昇っていく。先ほどまで吹いていた風が止んだのは、もしかしたら今だけ遠慮してくれたのかもしれない、だなんて思ったりした。

「あれ、山内どうしたの?」

 そろそろひとりきりの根本くんが可哀想だという話になり、(きびす)を返そうとするが、「え」と墓石を振り返った山内くんだけはまだ、ここに用がある様子。

「あとから行くから、先行ってて」
「え、なんで」
「俺はもうちょっと、こいつとふたりで話がある」

 変なのー、とみっちゃんが言い、わたしたちふたりは根本くんが待つ入り口へと急ぐ。途中、後ろを振り向くと、山内くんは真剣な表情で墓石に手を合わせていた。