「え。今日の観光スポットって墓地?」

 秋宮くんのお墓がある墓地に着き、身を震わせたのは何も知らされていなかった根本くん。「ここ、出るらしいぜ」と山内くんが悪戯に言えば、根本くんは上着のフードを被った。

「やっべえ寒気した!俺無理だってこーいうのっ!」
「あははっ。まだ明るいんだから平気だろ」
「無理無理!ここで待ってる!」

 勝手に連れて来られて、入り口に置き去りにされた根本くんにはごめんと思うけれど、この予定だけは外せない。今回の旅行は、このお墓参りを済ませて初めて、完遂するんだ。

「確かその辺じゃなかったかなー。あ、ほら。ここだここ」

 みっちゃんの記憶を頼りに到着した、秋宮家のお墓。

「秋宮、おひさ〜」

 ひらひらと手を振って、墓石に陽気に話しかける彼女のハートを少しわけてほしいと思いながら、わたしも「秋宮くん」と口にする。

「秋宮くん、久しぶり。元気してた?」

 死んでしまっている人間に対して使う挨拶ではないと、わかっている。けれどわたしは、あの頃のように彼と話がしたかった。

「ずっと顔を出さなくてごめんね。なんだよ今更って、そう思うよね」

 わたしが墓石に話しかけている間は、みっちゃんも山内くんも静かにしていた。右と左に立つふたりのお陰で、わたしは今日、ここに来られた。

天国(あっち)でも面白いこと言って、みんなのこと笑わせてるの?」

 秋宮くんは、楽しい人だった。

「どうせ秋宮くんのことだから、友達なんてすぐできたんでしょ。それでまた、中二の時みたいにみんなに好かれて、楽しく過ごしてるんでしょ」