「ちょっと胡都お〜、いい加減に起きてよお〜」

 えいっとされたデコピンで、目覚めた翌朝。

「おはよお……」
「この寝ぼすけっ。早く朝風呂行こー」

 目を(こす)り、不鮮明な視界で見渡す室内。すると男子たちの布団でも、似たような光景が繰り広げられていた。

「おい山内、起きろ」
「ん〜……」
「なんで俺の全体重乗せてんのに、眠れんだよ」

 うつ伏せて寝る山内くんの上で、仰向けに寝そべる根本くん。起きろ起きろと後頭部同士をぶつけ続ける彼だが、いびきをかき始めた山内くんには、お手上げ状態だった。

「なにこいつ。もしかして冬眠入った?」

 疲れきった山内くんを見れば、昨夜夜更かしに付き合わせてしまったことを悪く思った。
 目を落とした手のひら、軽く握る。まだ残っているのは、山内くんの温もり。手を繋いでくれた、抱きしめてくれた。彼の心はまだわたしにあるのだと、ほんの少しばかり自惚れてしまった夜だった。