「美智からちょこっとしか聞いてないけどさ、秋宮はクラスの中心的存在で、みんなに好かれてるやつだったんだろ?なら、あいつの性格は『良い』で決定だ。最期のその瞬間だけ、胡都に贈る言葉のチョイスをミスっただけだよ。あの日のことを後悔しているのは、胡都だけじゃない。あいつも同じだ」
わたしを励ますように、明るく出された山内くんの声。絶え間なく岸を打つ波音も、突き刺すような風音も消したその声は、しんしんとわたしの耳へ降り積り、わたしの鼓膜から、あの日の音を剥がして落とす。
周囲の悲鳴、電車の警笛、煩い雨音。
心の中、秋宮くんが飛び跳ねて喜んだ。
「え、な、なに胡都っ」
気付けば触れていた、山内くんの顔。ゆっくりと頬骨をなぞり、冷えた耳朶を撫でて。
「ちょっとこの耳、貸して」
「え、耳?」
「ちょっとだけ」
そう言うと、ハテナいっぱいつけた横顔を近付けてきた山内くん。両手で口元を覆ったわたしは、彼の耳へ向かって囁いた。
「ありがとう、山内くん」
波音にも風音にも邪魔されずに、わたしの声も届いただろうか。
わたしを励ますように、明るく出された山内くんの声。絶え間なく岸を打つ波音も、突き刺すような風音も消したその声は、しんしんとわたしの耳へ降り積り、わたしの鼓膜から、あの日の音を剥がして落とす。
周囲の悲鳴、電車の警笛、煩い雨音。
心の中、秋宮くんが飛び跳ねて喜んだ。
「え、な、なに胡都っ」
気付けば触れていた、山内くんの顔。ゆっくりと頬骨をなぞり、冷えた耳朶を撫でて。
「ちょっとこの耳、貸して」
「え、耳?」
「ちょっとだけ」
そう言うと、ハテナいっぱいつけた横顔を近付けてきた山内くん。両手で口元を覆ったわたしは、彼の耳へ向かって囁いた。
「ありがとう、山内くん」
波音にも風音にも邪魔されずに、わたしの声も届いただろうか。