「胡都っ。なにしてんだよっ」

 行くあても決めず、ただその白い灯台が放つ光へ導かれるように遊歩道を進んでいると、突然後ろから肩を掴まれた。驚き振り返ると、そこには息を切らせた山内くんが立っていた。

「山内くん、どうして……」
「トイレで起きたら、胡都いないんだもんっ。心配になって、探し来たっ」

 スマートフォンも持たずに出てきたわたし。旅館からは右にも左にも、前にだって道は伸びているのに、どうして彼は、いつもわたしを見つけ出してくれるのだろうか。

「ごめん」
「いや、べつに謝ることじゃないけど……」

 びゅうっと冷たい夜風が吹いて、身を縮こまらせる山内くん。早く暖かいところへと、彼を行かせてあげたかった。

「ちょっと散歩してから戻るから、山内くんは先に部屋で寝てて」
「え、散歩?今何時だと思ってんの」
「二時」
「ぶっぶー、もう二時半。女の子がひとりで出歩く時間じゃないよ」

 帰ろ、と手を引かれ、わたしはその引力に逆らった。

「ま、まだ帰りたくないっ」
「胡都……?」
「まだ寝たくないの、まだ明日が来てほしくないのっ」