チクタクチクタクと、時計が進む。けれど実際はそんなにスムーズではなく、チ、チ、チと、除夜の鐘より遅く感じた。
 慣れないシーツに身を委ね、見上げる天井。皆が寝静まった丑三つ時。細やかに灯る豆電球に明日を思う。
 このまま眠ってしまえば、すぐに明日はやって来る。「ちょっと待って」や、「まだ心の準備が」などと言っている暇もなく、秋宮くんのお墓へ行くんだ。

「んっ……」

 寝返ると、キリリ、腹が疼いた。墓石の前で胡座をかいて待っている秋宮くんが、目に浮かんだ。

 猫足で布団から抜け出たわたしは、浴衣の上にコートを羽織る。裸足をスニーカーへ突っ込んで、そろりと館内の廊下へ出ると、眩い蛍光灯の光に目を細めた。

「さっむ……」

 旅館の外は潮風にさらされていて、とても寒かった。部屋から見えたポストカードのような光景も、夜はお休み。真っ黒な海を照らし続ける灯台だけには、鳥や魚が見えているのだろうか。