浴衣に着替えて部屋へ戻ると、行きの電車で見たトランプカードがちゃぶ台の上に散らばっていた。

「女ってまじで風呂長いのな。もうこれで、四戦目よ」

 ちょうどその四戦目が始まるところなのか、「そんなに湯船入ったら茹だるわ」と呟いた根本くんが、裏返しにされたカードを二枚ひっくり返す。

「神経衰弱?」
「そう」

 わたしに気を遣ってくれたみっちゃんが、敢えて根本くんの隣に座るから、残された座椅子は、山内くんの隣にしかなかった。

「じゃあ、俺と胡都 対 根本と美智な」

 ぺたんとお尻を座面につければ、いつの間にやら組まれていたチーム。座り位置から自然にそのペアになったのだろうけれど、わたしは山内くんに選ばれた気になって、心が弾んだ。

「や、山内くんに迷惑かけないよう頑張るね!」

 胸元で作った拳で意気込めば、彼は笑った。

「あははっ。胡都ってば超本気じゃんっ。たかがトランプなのにっ」

 少しはだけた彼の浴衣姿と、真横から香るシャンプーの匂い。山内くんの側にいる間は、ずっとドキドキしていた。