「胡都はさ、趣味とかあるの?」
カコッとブラックコーヒーの缶を開けて、山内くんが聞く。対してわたしが開けるのは、砂糖入りの甘いココア。
「胡都の好きなもの、知りたい」
その問いに、わたしは黒目を斜めに上げた。
「いちご、かなあ」
「いちご?」
「あとはモンブランとか、スイートポテトとか」
最初に問われた『趣味』という単語をすっかり忘れ、わたしがデザートばかりをあげてしまったのは、今日の昼休みにみっちゃんたちと盛り上がった、秋季限定スイーツの話題のせいだ。
くくくと堪えきれていない笑い声が聞こえて、失態に気付く。
「やだわたしってば、食べ物ばかり言っちゃったっ」
かあっと熱を帯びる両頬。秋めいた風が、そこをやんわり撫でていく。
「胡都は甘いものが好きなんだね」
ブラックコーヒーを持っていない方の手で、口元を覆う山内くん。角ばった甲、長い指。大きなその手は、彼の顔面をすっぽり隠すことも容易だろう。
「や、山内くんは甘いもの、そんなに好きじゃないでしょう?」
彼の手元にある、真っ黒な缶を見てそう言った。すると彼も同じものを見て、それを回して、成分を確かめる。
「まあ、コーヒーには砂糖入ってなくていいタイプかも」
「わたしはブラック、苦手なんだ。ミルクやお砂糖が入ってないと、飲めない」
「そうなんだ」
缶から外された山内くんの視線。今度はわたしの手元に注がれる。
カコッとブラックコーヒーの缶を開けて、山内くんが聞く。対してわたしが開けるのは、砂糖入りの甘いココア。
「胡都の好きなもの、知りたい」
その問いに、わたしは黒目を斜めに上げた。
「いちご、かなあ」
「いちご?」
「あとはモンブランとか、スイートポテトとか」
最初に問われた『趣味』という単語をすっかり忘れ、わたしがデザートばかりをあげてしまったのは、今日の昼休みにみっちゃんたちと盛り上がった、秋季限定スイーツの話題のせいだ。
くくくと堪えきれていない笑い声が聞こえて、失態に気付く。
「やだわたしってば、食べ物ばかり言っちゃったっ」
かあっと熱を帯びる両頬。秋めいた風が、そこをやんわり撫でていく。
「胡都は甘いものが好きなんだね」
ブラックコーヒーを持っていない方の手で、口元を覆う山内くん。角ばった甲、長い指。大きなその手は、彼の顔面をすっぽり隠すことも容易だろう。
「や、山内くんは甘いもの、そんなに好きじゃないでしょう?」
彼の手元にある、真っ黒な缶を見てそう言った。すると彼も同じものを見て、それを回して、成分を確かめる。
「まあ、コーヒーには砂糖入ってなくていいタイプかも」
「わたしはブラック、苦手なんだ。ミルクやお砂糖が入ってないと、飲めない」
「そうなんだ」
缶から外された山内くんの視線。今度はわたしの手元に注がれる。