「星、綺麗だねえ」

 露天風呂で、夜空を見上げながらみっちゃんと会話。

「みっちゃん。そんなに乗り出すと、海に落ちちゃうよ」
「あははっ。落ちない落ちないっ」

 はあーっと白い息を吐き、星空へ天の川のようにかかるそれを見て、山内くんの自宅近くで飲んだマロンココアを思い出す。並び歩き、手だって繋いで。もうずいぶんと、昔のことのよう。

「山内、心配してたよ」

 彼を想っていれば、出た彼の名前。お湯に肩まで浸かり直したみっちゃんが言う。

「さっき胡都、山内に向かって『秋宮』って言ったんだって?なんかまた、あの日のこと思い出して追い詰められてんじゃないかって、気にしてた」

 わたしのトラウマに関して、少し深い話を山内くんとしたと、以前みっちゃんから聞かされた。詳しい内容は知らないけれど、それからふたりの距離は近くなったのだろうか。
 ちゃぷんと沈めた両手でお湯を掬い、それを見つめる。

「山内くんが、ちょっとわからなくなっちゃった」