「え、部屋分かれてないの?」

 チェックインの際、鍵が一本しか渡されなかったことに、もしやとは思っていたが、部屋はまさかの男女混合四人部屋。十五畳ほどの和室に仕切られるものはなく、部屋の中央には四角いちゃぶ台がひとつと座椅子が人数分配置してある。
 え、え、え、と、露骨に狼狽(ろうばい)し出した根本くんには、みっちゃんが「変態」とツッコミを入れた。

「なに考えてんのよまったくっ。根本が高くない方がいいって言ったから、安い部屋探してあげたのに」
「だ、だって着替えとかどうすんの」
「そんなの大浴場ですればいいじゃんっ」

 靴を脱ぎ、畳へ上がるみっちゃんに続き、戸惑い気味のわたしたちも入室する。一番最後に靴を脱いだわたしへ、振り向いた山内くんが聞く。

「胡都も知らなかったの?男女同室だってこと」
「あ、うん」
「嫌?」

 真顔な彼への、答えに困る。今のわたしが抱いている感情は、嫌悪感というものとは少し違う気もするけれど、それをどう言葉に表せばいいかわからなかったから。

「嫌じゃ、ない」

 変なところでカンマを打ち、返答すると、山内くんがゆるりと笑った。

 ダウト。

 またそう思わせてしまったかな、と彼の笑顔の裏を探る。

 窓からは、海と白い灯台が見えた。青い空にはかもめが数羽飛んでいて、まるでポストカードのようだった。