「秋宮……?あいつがどうかしたのっ?」

 わたしと同じ目線まで腰を下ろした山内くんの眉と眉の間が狭まって、そこで初めて「しまった」と思う。

「ご、ごめんっ。ちがうのっ」

 慌てて打ち消そうとするけれど、それは無論、無理なことで。

「ちがくないじゃんっ。だって今、秋宮の名前──」
「言ってない!」

 わたしは自分を否定するだけ。

 そんなわたしの腕を掴もうと伸ばされた山内くんの手は、パシンと無遠慮に追い払う。そんなことをしたくはなかったのに、これ以上問い詰められたくはないと思ったら、勝手に手が出た。行き場を失くした彼の手は、宙で固められたように浮いていた。

「どうしたの、胡都」
「伊吹大丈夫?腹でも壊したか?」

 わたしの作った奇妙な空気は、他のふたりにも心配させてしまう始末。墓参りだけでは寂しいからと、せっかく旅行を兼ねたのに、どうして上手く振る舞えないのだろうと自分を疎んだ。

「ごめんねみんな、大丈夫」

 すくっと気丈に立ち上がり、「ちょっと立ち眩み」と、嘘をつく。遅れて腰を上げた山内くんは、暗く、傷付いたような顔をしていた。

 胡都の嘘には俺、敏感だから。

 トランプゲームをしていた時の、彼の言葉が頭へ()ぎる。