一日目は観光を楽しんで、秋宮のとこには二日目に行こう。

 そう言ったみっちゃんが立ててくれた初日のプランは、五重の塔と大仏からスタートした。

「見て胡都っ。写真で見るよりおっきいよ!」
「ほんとだあっ」

 歴史的建造物に浮かれ騒ぐ女子ふたりと、ご当地ぬれ煎餅を頬張りながら「うまい」とか言っている男子ふたり。

「ちょっと山内たち、ちゃんと大仏見なよっ」
「見てるよ」
「もっとちゃんと!」
「じーっ」
「口だけじゃん!」

 みっちゃんと山内くんは、そんな些細なことでも会話が弾んでいて、胸の付近がまたざわざわして、そしてネガティブなことを考えてしまう。
 もう、山内くんはわたしのことなんて好きではないのかもしれない。

 俺ね、本当は胡都と別れたくなかったの。だって胡都がすんごい好きだから。

 ふたりきりの放課後の教室で、そう言ってくれた彼だけれど、それは十月中旬の話。まだマフラーもコートも身に纏っていない、季節も違う時の話だ。
 季節のように人の気持ちも移ろうと、過去に付き合った人たちで学んでしまった。初めはわたしに好意を寄せてくれていても、そのうち愛想を尽かす。最後の最後まで、こんなちっぽけなわたしを想ってくれていたのは、秋宮くんただひとりだけだ。

 秋宮くん。彼の愛は本当に本当に、大きかった。