「旅行ってどこ。他に誰来んの。なんで俺と山内?」
「千葉の銚子(ちょうし)ってとこ。伊吹胡都。なんとなく」

 根本くんの素朴な疑問にみっちゃんが即答すると、それを聞いていた山内くんの瞳がこちらを向いた。

「え、胡都も行くの?」
「う、うん」
「胡都と美智と、根本で旅行……?」
「い、嫌だ?」

 嫌だと言われるのが怖くて、俯きがちに聞いてみた。前髪の隙間から上目でちらり、山内くんを見ると、彼は左右にぶんぶんと首を振っていた。

「い、嫌じゃないっ!」

 廊下まで響き渡るような大声でそう言われ、全身がむず痒くなる。

 山内くんが好き、大好き。

 それを実感して、なんだか涙が出そうになった。

「根本も行くよなっ?」

 急に意欲的になった山内くんに肩を組まれ、根本くんが「うーん」と唸る。

「べつにいいけど、そんな高くないプランでよろしくな」
「わかってるって。東京駅出ちゃえば銚子なんて二時間くらいだし、宿も安いとこ目星つけてあるから」
「じゃあオッケ」

 そう根本くんが頷けば、決まる予定。みっちゃんがこそっと投げてきたウインクには、白い歯を見せて返した。