「いいから旅行いこーよ、とりあえず」

 お金も時間もかかることなのに、さくっと話を進めるみっちゃんには、わたしの隣で立つ萌ちゃんとゆっぴーが、「さすが」と感嘆していた。

「美智のあーいうとこ、まじですごいよね」

 と、ゆっぴーが言えば。

「ふふふっ。山内くんも根本くんも、亀みたいに首出してるよ」

 と、萌ちゃんが返す。何も言わないわたしの背を、ふたりが「大丈夫だよ」と摩ってくれた。

「大丈夫だよ、胡都。美智なら山内を誘える」
「そうだよ。美智は言い出しっぺが得意だから」

 言い出しっぺが得意。
 萌ちゃんのその言葉には少し笑えて、わたしはことの行方を見守った。

 剣崎先輩と別れてから間もなくして、ゆっぴーと萌ちゃんにもわたしの全てを打ち明けた。
 過去にわたしを好きでいてくれた、秋宮くんという人がいたこと。彼に告白をされて断って、目の前で命を絶たれたこと。そしてそれがトラウマとなり、断ることが怖くなってしまったこと。
 山内くんと付き合った時も、そこに好きの気持ちはなかったこと。けれど彼を知っていくうちに、段々と惹かれていったこと。
 山内くんが剣崎先輩からわたしを救ってくれたこと。背中を押してくれたこと。けれどもう一度わたしに告白をしてくれると言ったのに、してくれないこと。

 みっちゃん以外の友人には話せないだろうと思っていた数々を、わたしがどうして話すことができたか。きっとそれも、ノーと言えたお陰、山内くんのお陰。彼がわたしに授けてくれたものは、両手で抱えても零してしまうほどたくさんある。