線路を挟み、異なるホームで向き合って立つ俺等ふたり。風が胡都の髪をさらりと靡かせ、それだけでも目を奪われる自分に、彼女への絶大な愛を思い知らされる。

「ばいばい、山内くんっ」

 先に電車到着のアナウンスが流れたのは、胡都のいる方。車両がホームに進入するまであと少し。手を振る彼女に俺も振る。

「また明日ね、胡都っ」
「うん、ばいばいっ」
「ばいばいっ」

 駅へ着き乗客を乗せれば、再び走り出す電車。四角に縁取られた窓枠の中、もう一度手を振った胡都がまた真珠をくれたから、俺は心に決めたんだ。

「ばいばい、胡都……」

 君をもう、自由にしてあげようって。

 ようやく空へと羽ばたいた鳥。俺は君の檻にはなりたくない。独りよがりな三度目の正直などなくていい。
 俺はただ、見守るよ。君が優雅に羽ばたく姿を。