「最近のドラマって、恋愛もの多くない?」
「そうですか?」
「多いよお。なんか観ててさ、何年も彼氏いない自分が嫌になっちゃうくらい」
「あはは。西条先生綺麗だし、モテると思ってました」
「なに言ってるのよ伊吹さん。誰がモテないって言った?数年いい男が寄ってこないだけで、告白はされてるから」
「え、そうなんですか?」

 目を開ける前にここが保健室だと悟ったのは、そんな会話と消毒液の匂いから。ベッドを囲っていた淡い色のカーテンをシャッと開けると、そこにはクッキーを摘まみながら談笑をする先生と生徒の姿があった。

「あ、おはよ山内」
「なにしてんの……」
「なにって、あんたが全然起きないから、伊吹さんとおやつ食べてんの」
「おやつって、だってまだ──」

 まだ午前だろう、そう言いかけて俺が口を結んだのは、掛け時計の短針に驚かされたから。

「もう四時よ。山内の死んだふり長すぎて、ちょっと焦っちゃったわ」

 さてと、とデスク上の菓子袋を片付ける西条先生の傍、腰を上げた胡都が眉を顰めてやって来る。

「山内くん、大丈夫?」
「ああ、うん」
「わたしのせいで、ごめんね」

 きめ細やかな手が俺の頬にあてがわれ、そこへ全神経が集まっていく。