「剣崎は死なねえよ!」

 掠れた声を目一杯出して、胡都の心へ響けと願う。

「剣崎は胡都を愛してない!だからなにを言おうがこいつは死なない!こいつは明日も明後日も、うざったいくらいぴんぴんしてるよ!」

 はあっ!?と目玉をひん剥く剣崎の隣、両手で口元を覆った胡都の気持ちが少し動いたように見えたから、俺は最後の声を振り絞る。

「だから胡都!ノーってはっきり言うんだ!俺が保証する!宝石のように笑える胡都なんかに、誰も殺せないって!」

 だから安心して。

 そこまではもう、喉がもたなかった。いや、単純に日頃の運動不足が祟り、声を出す力が枯渇していただけかもしれないが。
 走り回った足に比例して、息は上がる。ただでさえあっぷあっぷだった肺に無茶をさせたんだ、もう酸素を取り込むことで精一杯だった。

 ビュンビュン行き交っていた車が速度を落とし、視界に映る全てがスローに見えたのは、次の瞬間。

「剣崎先輩ごめんなさい!わたし、あなたとは付き合えません!」

 震えた声、だけど力強い声だった。