「胡都!胡都!」

 今すぐ駆けつけたい。けれど目の前では車が盛んに行き交っている。横断歩道が近くにないこの場所を歯痒く思いながら、俺は声を張り上げた。

「胡都行くな!一緒にいたくないやつのところになんか、行かなくていい!」

 俺の声に気付き振り返ったふたりのうち、悪者の方が声を荒げる。

「はあ〜!?なんだよお前!こんなとこまでついて来たのかよ!」

 俺に向けて、しっしと虫でも払うかのように手を振った剣崎は、その手をそのまま胡都の肩へ乗せていた。

「離せよ剣崎!」
「先輩を呼び捨てしてんじゃねえ!」
「いいから離せ!」
「うるせえ!」

 吠える剣崎の傍で、びくびくと怯える胡都が見える。今にも取って食われそうな表情で、泣きそうにだってなっている。
 ガードレールに手をかけて、俺は身を乗り出した。

「たまたまだったんだ!」

 喉が焼かれるほど熱を帯びた声で、俺は懸命に訴えかける。

「秋宮が死んだのはあいつの運が悪かったってただそれだけだ!ショックを受けてたら偶然線路があって吸い込まれた!胡都が突き落としたわけじゃない!だからあれは、胡都のせいじゃない!」

 胡都のせいだから。
 一生俺を想っててよ。

 そう言った秋宮は、胡都への深い愛情があった。だから生前叶わなかった夢を、自決後の未来へ託した。
 そう、わかるだろ、胡都。彼が死んだのは愛があったから。そして彼が君へ与えたトラウマにも、愛があったんだ。