ゼエゼエと息を切らせ、ようやく辿り着いたふたつ先の駅。剣崎の地元はここで間違いない、けれど住所は知らない俺。疲弊しきった足を動かし、闇雲に探す他にない。

「どこだよ、まじで……」

 家々の表札を見てまわり、剣崎の文字があるかどうかを確認する。まだコンビニかどこかにいてくれよと微かな望みを託し、店の一軒一軒を覗き見る。それでも発見できぬ胡都の姿に、闇が心を支配していく。

「まじであいつ、胡都になにかしてたらタダじゃおかねー……」

 酷使した足はもう限界。棒と化したそれの先端には餅がついているかの如く、地面へべったりへばり付く。
 片側三車線の大通り。電柱に手をかけ項垂れていれば、コンクリートへ落ちていく汗の雫。それを目で追い、湧き上がる思いはこれ。

 辛い。

 胡都が今苦しんでいるのかもしれないと思うと辛い。胡都が今恐怖の中にいるのかもしれないと思うと辛い。
 辛い、辛い、辛い。何もしてやれないこの時間が、さっきからずっと辛い。

「胡都ぉ……」

 それでも俺のやることは決まっている。それはどうにかして剣崎と胡都を見つけ出すこと。

 頭を振って汗を飛ばして、勇んだ顔を上げた時、俺の黒目が何かを捉えた。

「こ、胡都!」

 それはまさに今、車線を隔てた向こう側で、路地へ入ろうとしていたふたりだった。