「はあっ、はあっ」

 とりあえず駅へと足を走らせる中、俺は脳をフル回転。

 剣崎の地元ってどこだっけどこだっけ。

 しかし何のヒントもないその答えが(ひらめ)くはずもなく、俺は絶望に包まれていく。

「胡都っ……!」

 君には心から笑っていてほしい。それなのに君の笑顔を奪おうとする悪者が中々排除できなくて、悔しく思う。

「はあっ、はあっ」

 駅の近くの公園へ着き、俺は水道水を喉へ流す。見えない胡都の居場所に大きな不安が募るのに、ここで思い出すのは彼女とモンブランを食べたあの日のこと。

 うん、すっごく美味しいっ。

 そう言って、胡都は喜んでくれたのに、俺がその雰囲気を壊してしまったんだ。

 胡都と剣崎、ふたりで一緒に帰ってたじゃんかっ。あのあとどこ行ってたの?
 た、ただの喫茶店……
 どこの。
 二駅先の、剣崎先輩の地元っ。

「あ」

 はっとし、顔を上げたのは、以前彼女がくれたヒントに気付いたから。
 剣崎は、俺が使う時間帯に同じホームを利用しない。彼を駅で見かける時は、必ず反対側に立っている。
 やつの自宅最寄り駅がわかった俺は、駅までの風を切る。