ガゴン

 先ほどの自動販売機でホットのブラックコーヒーを購入し、家まで少し遠回りになる川沿いを行く。
 見上げれば、湯気が星空の高いところ、ペガススの四辺形と重なっていた。

「あ」

 突として現れた煌めく流星が、星空のキャンバスを一筋引っ掻いて、跡形もなく消え去った。生まれて初めて見る光景に、姉貴かも、と刹那思う。

 愛でできた傷は、愛で治してあげなさい。

 流れ星に願いごとをすれば叶うなど、誰かの創造したお伽話だ。(まばた)きの間に行方をくらます星に願うなんて、できるわけがない。

「よしっ」

 俺はこの手で胡都を救う。彼女のトラウマを拭ってみせる。
 足元に転がる小石をひとつ拾い、なるべく遠くの川へ投げた。チャポンと水が弾けるよりも先に、俺は全力で駆け出した。