「今日胡都がいてくれて、俺まじで助かった」

 改札の前、別れ際。彼女が飲み干した缶を受け取り、俺は言う。

「それと、ココが亡くなった日に、一緒にいてあげられなくてごめんね」

 大切な誰かを失う時、人はきっと、人の温もりで癒される。今日の俺はそれを身に染みてわかった。

「ココは幸せだったと思う。最期まで、最期のその瞬間まで、大好きな胡都といられてさっ」

 ねえ姉貴。姉貴もそうだったかな。死ぬ直前まで、最期の最期まで彼氏と過ごせて、幸せだったって思ってもいいのかな。

 今は秋なのに、季節外れの菜の花が、その時見えた。

「山内くんのお姉さんも、きっと幸せだったと思うよっ」

 けれどそれは花ではなくて、俺が菜の花だと見紛ったものは、胡都の柔らかな笑顔だった。

「こんなに優しい山内くんが弟で、幸せだったと思うっ」