駅までの道すがら、礼と詫び代わりのドリンクを、自動販売機で購入する。

「どれがいい?」
「ん〜、じゃあ、これ」
「ははっ。だと思った」

 ガゴンと落ちてきたものは、秋季限定ホットマロンココア。

「じゃあ俺はこれにしよっと」

 俺が押したボタンはその隣、スタンダードなホットココアだ。

「乾杯」
「いただきます」

 カコッとふたりで缶を開けると、ゲージから出された犬のように空へ飛び出す白い湯気。
 もうすぐ十一月。夜は昼より肌寒い。

「胡都、寒くない?」
「平気だよ」
「ごめんね、こんなに夜遅くまで」

 玄関から出た途端、俺がぶるっと寒気を感じたのだから、スカート姿の胡都の身体は、もっと冷えてしまっているだろう。

「胡都、手」
「え?」
「手ぇ貸して」

 ココアを持っていない方の彼女の手を、俺のパーカーのポケットへお誘いすると、彼女の手は戸惑いながらも、しずしずそこへやって来た。
 握りしめる手、冷んやりしている。胡都が今、こうして俺と手を繋いでくれているのも、断れない性格のせいなのだろうかと束の間思う。