急いで向かえと促され、混乱状態のまま校舎を出る。担任がタクシーを拾った大通りまで心配そうについてきた胡都は、後部座席でぽつんと座る、俺を見つめていた。

 閉まりいくドア。俺、今ひとりじゃいられない。

「胡都、きてっ」

 肘でドアを押し退けて、気付けば彼女の華奢な手首をとっていた。ほぼ無意識に近い行動だったけれど、彼女の手は、シャボン玉へ触れるように、ふわりと優しくとった。何故ならもう、朱色の痕など残したくないから。俺は大切な人を、大切にしたい。

「うんっ」

 病院へ着くまでのその間、胡都はずっと、俺と手を繋いでいてくれた。