「胡都、今日空いてる?」

 翌日の放課後。みっちゃん、(もえ)ちゃん、ゆっぴーとわたしの、いつものメンバー四人で廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。立ち止まり、振り向く。

「山内くん」
「俺、今日バイトない日なんだけど、よかったら遊ばない?」

 今日は昨日のリベンジだと、みっちゃんがつい今しがたカラオケに皆を誘ってくれたばかりだ。そして、わたしも首を縦に振ったばかり。

「ええっと、これからみっちゃんたちとカラオケに行くんだけど……」

 だからごめん、山内くんとは遊べないよ。

 言葉の続きを察してくれますようにと願いながら、わたしはそこで口を噤んだ。しかし四人の先頭にいたみっちゃんが、萌ちゃんとゆっぴーの頭越しに、こんなことを言ってくる。

「いいじゃんいいじゃん。今日は胡都、山内と遊べば?」

 思いがけない発言に、勢いよく首が半回転。山内くんと恋仲になったのだと、まだ報告できていない萌ちゃんとゆっぴーの瞳はぱちくり瞬いていて、ふたりの後ろで立つみっちゃんは、こそっとウインクを投げてきた。

「わたしたちとカラオケなんか、いつでも行けるじゃんっ。せっかく山内が空いてんだからさ、今日は山内とどっか行って来なよ」