時間を現在に戻そう。
彼女の主な仕事は、陰陽連が得た情報を写真と照合する事だ。例えば、
「あ。これは」
別の写真に目を留めた彼女の視線が鋭くなった。写真を展開し、眉を顰める。
「…ここは、生徒は出ない方がいいかもしれません。ランクにすると…中の上。そのくらいの妖魔の気配があります。隠れていそうな場所も書いておきますね」
「これは…妖魔は大した事がありませんけど、高濃度の瘴気が感じられます。土壌汚染もされていますから、浄化用のお神酒や水晶…それも最上級の物を持って行った方がいいかと。汚染がひどい箇所と瘴気の出所を記載しますね」
彼女はキャプションに注意書きを付けて保存する。相馬は「わかったわ」と頷いた。
「お陰で助かってるわ。式神達に偵察させただけじゃわからない事もあるもの」
「式神でも入れない場所や…入れても瘴気に毒されて、式神の浄化の方が大変になる場合もありますからね。汚染の度合いによっては下手をすると、式神の主にまで影響が及ぶ場合もありますし」
相馬は「その通りね」と首肯する。
「賀茂さんが『見て』くれるから、実習の事故も討伐のトラブルも、ここ2年くらいはゼロよ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
このように、白峰学園の生徒達の実習や妖魔討伐の実戦部隊が赴く場所を中心にして、梅組の一件のように他の陰陽師達やその式神が把握しきれていない存在の有無を確かめる。気配感知に長けた術者もいるにはいるが、彼女並みに精度が高い能力を持つ者がいないのだ。
相馬は「そうだ!」と両手を胸の前で合わせた。
「忘れてたわ。賀茂さん。いい知らせよ。そろそろボーナスの時期でしょう?」
「大人はそんな時期なんですね」
アルバイトである自分には無縁の事だと思いつつ、彼女は相槌を打った。相馬はにっこりと笑って、「正式な通達は後で来るけど」と、とっておきの秘密を打ち明ける口調で言った。
「今回は、賀茂さんにも特別ボーナスがあります!」
………。
彼女は首を傾げた。
「正社員でもない私がもらっていいものですか?」
「いいんだよ!」
「そうそう!もらえるものは病気とかじゃないならもらえばいいんだ!」
同じ対策本部のメンバーが、にこやかに声をかけてきた。相馬は彼女の肩を軽やかにぽんと叩く。
「働きには相応の報酬を。それが陰陽連の方針よ。でも、無駄遣いはしないようにね」
「ありがとうございます。大事に使います」
各所から「いい心がけだね!」と笑いが起こる。
このように、組織としては至って真っ当な陰陽連である。
彼女の主な仕事は、陰陽連が得た情報を写真と照合する事だ。例えば、
「あ。これは」
別の写真に目を留めた彼女の視線が鋭くなった。写真を展開し、眉を顰める。
「…ここは、生徒は出ない方がいいかもしれません。ランクにすると…中の上。そのくらいの妖魔の気配があります。隠れていそうな場所も書いておきますね」
「これは…妖魔は大した事がありませんけど、高濃度の瘴気が感じられます。土壌汚染もされていますから、浄化用のお神酒や水晶…それも最上級の物を持って行った方がいいかと。汚染がひどい箇所と瘴気の出所を記載しますね」
彼女はキャプションに注意書きを付けて保存する。相馬は「わかったわ」と頷いた。
「お陰で助かってるわ。式神達に偵察させただけじゃわからない事もあるもの」
「式神でも入れない場所や…入れても瘴気に毒されて、式神の浄化の方が大変になる場合もありますからね。汚染の度合いによっては下手をすると、式神の主にまで影響が及ぶ場合もありますし」
相馬は「その通りね」と首肯する。
「賀茂さんが『見て』くれるから、実習の事故も討伐のトラブルも、ここ2年くらいはゼロよ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
このように、白峰学園の生徒達の実習や妖魔討伐の実戦部隊が赴く場所を中心にして、梅組の一件のように他の陰陽師達やその式神が把握しきれていない存在の有無を確かめる。気配感知に長けた術者もいるにはいるが、彼女並みに精度が高い能力を持つ者がいないのだ。
相馬は「そうだ!」と両手を胸の前で合わせた。
「忘れてたわ。賀茂さん。いい知らせよ。そろそろボーナスの時期でしょう?」
「大人はそんな時期なんですね」
アルバイトである自分には無縁の事だと思いつつ、彼女は相槌を打った。相馬はにっこりと笑って、「正式な通達は後で来るけど」と、とっておきの秘密を打ち明ける口調で言った。
「今回は、賀茂さんにも特別ボーナスがあります!」
………。
彼女は首を傾げた。
「正社員でもない私がもらっていいものですか?」
「いいんだよ!」
「そうそう!もらえるものは病気とかじゃないならもらえばいいんだ!」
同じ対策本部のメンバーが、にこやかに声をかけてきた。相馬は彼女の肩を軽やかにぽんと叩く。
「働きには相応の報酬を。それが陰陽連の方針よ。でも、無駄遣いはしないようにね」
「ありがとうございます。大事に使います」
各所から「いい心がけだね!」と笑いが起こる。
このように、組織としては至って真っ当な陰陽連である。