「まあまあまあまあまあまあ!本日はわざわざおいで下さって!」
………。
黒之命曰く最大イベントこと『実家へのご挨拶』当日。訪いを告げた黒之命を一目見た途端に目を輝かせて出迎える蹊子を、彼女と元輝と李子。つまり賀茂一家は何とも言えない目で見ていた。
「祖母ちゃん、大はしゃぎだな…」
「立場が上の人って事もあるけど、お祖母ちゃん、凄い面食いだから…」
揉み手でもしそうな母の様子を、李子は恥じ入ったように見ながら言った。
少し時が遡るが、瑛子からかかってきた電話も終えて事の次第を共有してくれた彼女に、李子と元輝は次に気になっていた事を問いかけた。
「今更だけど、黒之命様ってどんな人なの?顔とか」
「神様だし、やっぱりイケメンか?芸能人とかだと誰似?写真ある?」
「いや私、芸能人だの俳優さんだのは全くわからんよ。元輝もお母さんもよく知ってるでしょ?あと私からすれば初対面だし写真なんて撮れる訳無いよ。そういう発想もできなかったし」
姉は二次元にしか興味が無い事を、元輝は思い出した。写真の事も、言われてみれば納得だ。元輝は「うん。訊いた俺が間違ってた」と頭を掻いた。
「そもそも私、三次元の相手の『美醜』で『醜』はともかく『美』の判定に自信が無いし。まあ少なくとも、鬼瓦みたいな顔はしていなかったと思うけど」
「お…鬼瓦…」
「お姉ちゃん。鬼瓦って」
どんな顔をしているのか却って気になりつつ迎えた今日。前情報として「長い黒髪の背が高い人が黒之命様だよ」と聞かされてはいたが、李子も元輝も内心驚いていた。これはとんでもない美形だと。
蹊子は「こんな不出来なうちの孫娘を見初めて下さって」と、満面の笑みで地面に付きそうな程に頭を下げているが、瑛子に「蹊子。蹊子」と幾度か声をかけられ、更に大きく咳払いをされた所でやっと口を閉じた。
彼女としては「いや不出来とか言われる筋合いなんか無いわ」と祖母の後頭部を思い切りはたいてやりたい所であったが、何分相手は年老いた身。流石にありえないとは思うが、物理的な手段に走ったその結果、勢い余って頸をぽっきりと折りでもしてしまったら大変だと思ったので、我慢する事にした。気を取り直したような瑛子の挨拶と共に頭を下げ、屋内へと場を移した。
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黒之命曰く最大イベントこと『実家へのご挨拶』当日。訪いを告げた黒之命を一目見た途端に目を輝かせて出迎える蹊子を、彼女と元輝と李子。つまり賀茂一家は何とも言えない目で見ていた。
「祖母ちゃん、大はしゃぎだな…」
「立場が上の人って事もあるけど、お祖母ちゃん、凄い面食いだから…」
揉み手でもしそうな母の様子を、李子は恥じ入ったように見ながら言った。
少し時が遡るが、瑛子からかかってきた電話も終えて事の次第を共有してくれた彼女に、李子と元輝は次に気になっていた事を問いかけた。
「今更だけど、黒之命様ってどんな人なの?顔とか」
「神様だし、やっぱりイケメンか?芸能人とかだと誰似?写真ある?」
「いや私、芸能人だの俳優さんだのは全くわからんよ。元輝もお母さんもよく知ってるでしょ?あと私からすれば初対面だし写真なんて撮れる訳無いよ。そういう発想もできなかったし」
姉は二次元にしか興味が無い事を、元輝は思い出した。写真の事も、言われてみれば納得だ。元輝は「うん。訊いた俺が間違ってた」と頭を掻いた。
「そもそも私、三次元の相手の『美醜』で『醜』はともかく『美』の判定に自信が無いし。まあ少なくとも、鬼瓦みたいな顔はしていなかったと思うけど」
「お…鬼瓦…」
「お姉ちゃん。鬼瓦って」
どんな顔をしているのか却って気になりつつ迎えた今日。前情報として「長い黒髪の背が高い人が黒之命様だよ」と聞かされてはいたが、李子も元輝も内心驚いていた。これはとんでもない美形だと。
蹊子は「こんな不出来なうちの孫娘を見初めて下さって」と、満面の笑みで地面に付きそうな程に頭を下げているが、瑛子に「蹊子。蹊子」と幾度か声をかけられ、更に大きく咳払いをされた所でやっと口を閉じた。
彼女としては「いや不出来とか言われる筋合いなんか無いわ」と祖母の後頭部を思い切りはたいてやりたい所であったが、何分相手は年老いた身。流石にありえないとは思うが、物理的な手段に走ったその結果、勢い余って頸をぽっきりと折りでもしてしまったら大変だと思ったので、我慢する事にした。気を取り直したような瑛子の挨拶と共に頭を下げ、屋内へと場を移した。



