「ただいま。ああ。元輝、起きてたんだ」
「今日は、ちょっと調子がいいから」
帰宅した彼女に、李子と元輝はそれぞれ「お疲れ様」と言葉をかけた。彼女はメッセージアプリで『お茶に誘われたから遅くなる』と母と弟に連絡を入れていたのだ。
「丁度いいや。お母さんと元輝に話したい事があるんだ。時間いいかな?」
「何?どうしたの?」
李子と元輝は思い思いの位置で聞く姿勢を見せる。スーツのジャケットを脱ぎもしないで、彼女はその場に腰を下ろした。大きく息をつき、ぽつりぽつりと話し出す。
「あのさ。お茶に誘われたって連絡したよね。そのお茶に誘ってくれた人、例の抜けない刀の付喪神なんだ」
正確に言うと『人』ではないのだが、彼女は便宜上『人』と称している。
「へ?何でまた?」
「ええと。一緒に来ていた女の子達も一緒じゃなくて、貴方だけが誘われたの?」
彼女は母の問いに「そうだよ。私だけだよ」と頷き、難しい顔をした。
「私、抜けない刀を抜く事ができたんだ。件の付喪神…『黒之命』って名前なんだけど。黒之命様が言うには、私はその刀の主らしいんだよ」
………。
李子と元輝は、揃って目と口を『O』の字にしていた。目って本当に丸くなるんだなあと、彼女はやはりマイペースに考えていた。
「まあつまり、私が『主』として見出された以上、私は正式に『主と刀』に黒之命様となる必要がある。そうすれば、妖魔が幽世から出てこないように完全に遮断できる。お母さんも元輝も、平和に暮らす事ができるって訳さ」
「いやちょいちょいちょいちょい!!」
いち早く我に返った元輝が大声を出すが、勢い余り過ぎて激しく咳き込む。彼女が「すまん。エキサイトさせ過ぎた」と詫びつつ元輝の背中をさすった。李子から「ほら薬」と渡された常備薬を服用し、元輝は呼吸を整える。
「話が突然過ぎるだろ!?ってか、お姉ちゃんは納得してんのかそれ!?」
「ねえ。お母さん、全然知らないから訊きたいんだけど、『主と刀』?になるって、何か特別な事が必要なの?儀式とか」
何せ李子は「あんたには話してもわからん」と蹊子に突き放されて、陰陽師に関する情報を徹底的に遮断されて育った。なので「全然知らないから訊きたいんだけど」が枕詞のようになる。
彼女は母の疑問に「いやそれがさ」と困り顔になった。
「儀式ってのが、結婚らしいんだよね」
「はあ!?」
李子と元輝は、揃って素っ頓狂な声を上げていた。
詳細を書くには、少し時間を遡る必要がある。
「今日は、ちょっと調子がいいから」
帰宅した彼女に、李子と元輝はそれぞれ「お疲れ様」と言葉をかけた。彼女はメッセージアプリで『お茶に誘われたから遅くなる』と母と弟に連絡を入れていたのだ。
「丁度いいや。お母さんと元輝に話したい事があるんだ。時間いいかな?」
「何?どうしたの?」
李子と元輝は思い思いの位置で聞く姿勢を見せる。スーツのジャケットを脱ぎもしないで、彼女はその場に腰を下ろした。大きく息をつき、ぽつりぽつりと話し出す。
「あのさ。お茶に誘われたって連絡したよね。そのお茶に誘ってくれた人、例の抜けない刀の付喪神なんだ」
正確に言うと『人』ではないのだが、彼女は便宜上『人』と称している。
「へ?何でまた?」
「ええと。一緒に来ていた女の子達も一緒じゃなくて、貴方だけが誘われたの?」
彼女は母の問いに「そうだよ。私だけだよ」と頷き、難しい顔をした。
「私、抜けない刀を抜く事ができたんだ。件の付喪神…『黒之命』って名前なんだけど。黒之命様が言うには、私はその刀の主らしいんだよ」
………。
李子と元輝は、揃って目と口を『O』の字にしていた。目って本当に丸くなるんだなあと、彼女はやはりマイペースに考えていた。
「まあつまり、私が『主』として見出された以上、私は正式に『主と刀』に黒之命様となる必要がある。そうすれば、妖魔が幽世から出てこないように完全に遮断できる。お母さんも元輝も、平和に暮らす事ができるって訳さ」
「いやちょいちょいちょいちょい!!」
いち早く我に返った元輝が大声を出すが、勢い余り過ぎて激しく咳き込む。彼女が「すまん。エキサイトさせ過ぎた」と詫びつつ元輝の背中をさすった。李子から「ほら薬」と渡された常備薬を服用し、元輝は呼吸を整える。
「話が突然過ぎるだろ!?ってか、お姉ちゃんは納得してんのかそれ!?」
「ねえ。お母さん、全然知らないから訊きたいんだけど、『主と刀』?になるって、何か特別な事が必要なの?儀式とか」
何せ李子は「あんたには話してもわからん」と蹊子に突き放されて、陰陽師に関する情報を徹底的に遮断されて育った。なので「全然知らないから訊きたいんだけど」が枕詞のようになる。
彼女は母の疑問に「いやそれがさ」と困り顔になった。
「儀式ってのが、結婚らしいんだよね」
「はあ!?」
李子と元輝は、揃って素っ頓狂な声を上げていた。
詳細を書くには、少し時間を遡る必要がある。



