「……よろしかったのですか?」

「何がだ?」

「カイルのことです。恐らくあの少女は『遺物』でしょう。回収するべきでは?」

「フフ、手元にあるものをわざわざ回収する必要もあるまい? それより、カイルは何か新しいものを作っていたか?」

「……ええ。アサルトライフル、スナイパーライフル、弾倉がむき出しのハンドガンに、据え置きで使うとんでもない威力の長身のライフルを確認しています」

「流石は元技術開発局長。期待を裏切らないものだ」

「それは全てあなたを殺すために準備しているとしていても、ですか。皇帝陛下?」

 そう言われ、皇帝は口元をゆがめて笑う。

「当然だろう? 何かにつけて接収してセボックあたりに量産させればいいのだよ、ブロウエル」

「セボック局長がいるのにカイルを生かしておくのは理解に及びませんが」

「フフ、そういうところだブロウエル。このゲラート帝国において私という存在は絶対。その皇帝にあやつはたった一人で挑んできたのだ。精鋭である親衛隊を惨殺して、この私の喉元までたどり着いたのはカイル=ディリンジャーただ一人。生かしておいた方が面白いではないか。やつの頭脳は使える。私という標的を殺すため、カイルは兵器を作り続けるだろう」

「……」

 ブロウエルは帽子のつばを片手で下げ、黙り込む。皇帝はさらに続ける。

「あれは死に追い込むほど閃きを発揮する。お前が拾った時もそうだったろう?」

「覚えていませんな」

「まあいい。『遺物』はカイルに任せ、いざというときに回収するやり方はある。下がってよいぞ」

「は……」

 ブロウエルは皇帝の部屋を後にする。窓の外を見ると、ちょうど雨がぽつりと降り出したところだった。

「陛下、それはあなたにとっても辛い道ですぞ。……カイル、お前はこの先どうする……?」



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