<あ”ー>
<♪>
<わふわふ>
マンドラゴラを連れて帰った後、特になにか起こることはなく穏やかなものだった。
土に潜るのかと思えば草の枕でごろ寝をしたりと、人間臭い動きは割と親しみのあるやつだった。いわゆるゆるキャラである。
そして今はマンドラゴラを連れて帰ってから次の休みを満喫中だ。ハンモックに揺られてお茶を飲むマンドラゴラにスライム達とアロンがじゃれついていた。
「すっかり馴染んじゃったわね」
「なんであいつは根っこからじゃなくて、湯飲みを使って口らしき穴から水を飲むかねえ」
「私達が根っこを切っちゃったから?」
俺が湯飲みを使ってコーヒーを飲んでいると、ヤツの琴線に触れたのか寄越せと催促されたので根っこの礼だと思いくれてやった。すると、よほど気に入ったのか湯呑で水を飲み、いつも持ち歩いている。
毎日、頭の葉っぱを使って磨いてから寝るという念の入りようなので、もう返してくれとも言えない。まあ、湯飲みくらい構わないのだが。
そんでウチに済むからにはと、泥だらけの身体を洗ったら茶色から真っ白になったのもなかなか驚いた。
気持ち良かったのか、自分からたわしを使ってこれまた毎日スライムのプールで体を洗ってたりする。
「ちょっと喋れるしちょこちょこ動いて可愛いよねマンドラゴラちゃん。名前つけてあげないと」
「最近はハンモックで寝てるだけじゃないか? 名前……ポンチョとかでいいか?」
「あ、いいかも」
サリアが手を合わせて笑顔になり、聞いていたのかむくりと体を起こしたポンチョが手を振っていたので問題なさそうだ。
「じゃあ今日からお前はポンチョな」
<あ”あ”->
「ふふ、嬉しそう」
「表情がないからわからんけど、そういうことにしておこう。さて、それじゃマトリアさんのところへ行くとするか!」
「おおー!」
そう、ついに母ちゃんを治療するための薬『オポロロロ』の材料が揃ったので作成に移るというわけだ。
そのために今日は国境を越えてアリーの家へと向かうため準備を進めていた。
「ポンチョ、湯飲みは置いとけって、割れたら困るだろ」
<あ”ー>
「大丈夫? あ、葉っぱにくるんでおくのね」
「割っても知らないぞ? スライム達は好きなところに乗っていいぞ、落ちるなよ」
<!!>
<わん!>
なんて声をかけるがスライム達はダッシュボードの前がお気に入りのようでずらりと並んでキレイに整列する。日本だとぬいぐるみとかをそこに置いている人もいるのでそれに近い感じだ。
アロンとポンチョは助手席と運転席の間にお座りをし、ダイトが乗っかったのを確認してから出発。
もう運送業で慣れた道をゆっくりと、具体的には時速60kmくらいで進んでいく。
この世界に来た時はどうなることかと思ったけど日本じゃ母ちゃんが助からない見込みだったことを考えると結果オーライってやつなんだろうな。
それに美人の彼女も出来て、仕事も順調。
これ以上ないくらい良い生活が出来ていて、正直なところ日本にいる時より恵まれているかもしれない。
<わふわふ>
<あ”っあ”ー>
……まあ、妙に人間以外の生物が集まっている気がするが。今度スライム達とポンチョにお揃いの帽子を作ってもらわないとなあ。
「あ、もう国境。やっぱりトラックは速いわね」
「一度ソリッド様が説明をしているから国に入るのも問題ないし、後は薬を作ってもらうだけだな」
そして相変わらず魔物に襲われることも無く、アリーの屋敷まで到着。
屋敷の前に行くと先に気づいたジミーが先導し、庭へ入れてくれた。
「お久しぶりですヒサトラさん」
「ありがとうジミー。久しぶりだな」
「今、アリーとマトリア様を呼んで来ますよ」
そう言ってこの場を去り、程なくしてアリーとビリー、そしてマトリアさん夫妻がやってきた。
「おう、兄ちゃんたちか。今日はドラゴンがいねえんだな」
<あやつはヒサトラの家に棲んでいる訳ではないからな>
「そうかい、それじゃベヒーモスの旦那と遊ぶとしようか」
<いいだろう、最近狩りもしていないし体が鈍っているところだ>
「庭が広いからって無茶すんなよ」
ライド爺さんはダイトと遊ぶようで、俺達だけでまたあの地下室へ赴く。
「久しぶりじゃな異世界の民よ。ここへ来たということは材料が揃ったということじゃな?」
「ああ。きっちり揃えてきたぜ!」
<~♪>
<あ”ー>
「というか不思議な色のスライムが居ますね……」
「こっちはマンドラゴラ、かい……?」
アリーとビリーが不思議そうな顔で足元に居る新しい仲間に目を向けて呟く。
「ああ、素材を手に入れる時、そのままウチに住み着いたんだ。魔物だけど言うことは聞くから安心していいぜ」
<あ”!>
<!!>
「あ、可愛いかも」
アリーがマンドラゴラのポンチョを抱き上げて微笑み、ビリーは恐る恐るプロフィアを両手で持ち上げていた。
その様子を見ながらマトリアさんが口を開く。
「ふむ、ベヒーモスは意思疎通ができるから不思議ではなかったが、まさかスライムとマンドラゴラを使役するとは驚いたわい」
「使役っていうか勝手についてきただけだけどな?」
「いや、魔物は警戒心が強いのでこうやって懐くことは無いのじゃ。よほどお前さんが気に入ったのじゃろう」
「ヒサトラさんは優しいですからね」
サリアが俺の手を握って笑う。
照れくさいので話を変えておこうと、頬を掻きながら口を開く。
「そ、そんじゃ、早速これを使って薬の作成を頼むぜ! これの出来次第で母ちゃんをこっちの世界へ呼ぶ予定なんだ」
「うむ、では預かるとしよう。図鑑によると煮込みに煮込んで約ひと月かかる。そのあたりの時期にここへ来てくれるか?」
俺はその言葉に頷き了承する。
どうせ自分じゃ作れないから頼むしかねえしな。で、そのまま実験をアリーも親父さんにやるらしいから立ち会って欲しいとも。
願っても無いと俺はマトリアさんに素材を渡すのだった。
<♪>
<わふわふ>
マンドラゴラを連れて帰った後、特になにか起こることはなく穏やかなものだった。
土に潜るのかと思えば草の枕でごろ寝をしたりと、人間臭い動きは割と親しみのあるやつだった。いわゆるゆるキャラである。
そして今はマンドラゴラを連れて帰ってから次の休みを満喫中だ。ハンモックに揺られてお茶を飲むマンドラゴラにスライム達とアロンがじゃれついていた。
「すっかり馴染んじゃったわね」
「なんであいつは根っこからじゃなくて、湯飲みを使って口らしき穴から水を飲むかねえ」
「私達が根っこを切っちゃったから?」
俺が湯飲みを使ってコーヒーを飲んでいると、ヤツの琴線に触れたのか寄越せと催促されたので根っこの礼だと思いくれてやった。すると、よほど気に入ったのか湯呑で水を飲み、いつも持ち歩いている。
毎日、頭の葉っぱを使って磨いてから寝るという念の入りようなので、もう返してくれとも言えない。まあ、湯飲みくらい構わないのだが。
そんでウチに済むからにはと、泥だらけの身体を洗ったら茶色から真っ白になったのもなかなか驚いた。
気持ち良かったのか、自分からたわしを使ってこれまた毎日スライムのプールで体を洗ってたりする。
「ちょっと喋れるしちょこちょこ動いて可愛いよねマンドラゴラちゃん。名前つけてあげないと」
「最近はハンモックで寝てるだけじゃないか? 名前……ポンチョとかでいいか?」
「あ、いいかも」
サリアが手を合わせて笑顔になり、聞いていたのかむくりと体を起こしたポンチョが手を振っていたので問題なさそうだ。
「じゃあ今日からお前はポンチョな」
<あ”あ”->
「ふふ、嬉しそう」
「表情がないからわからんけど、そういうことにしておこう。さて、それじゃマトリアさんのところへ行くとするか!」
「おおー!」
そう、ついに母ちゃんを治療するための薬『オポロロロ』の材料が揃ったので作成に移るというわけだ。
そのために今日は国境を越えてアリーの家へと向かうため準備を進めていた。
「ポンチョ、湯飲みは置いとけって、割れたら困るだろ」
<あ”ー>
「大丈夫? あ、葉っぱにくるんでおくのね」
「割っても知らないぞ? スライム達は好きなところに乗っていいぞ、落ちるなよ」
<!!>
<わん!>
なんて声をかけるがスライム達はダッシュボードの前がお気に入りのようでずらりと並んでキレイに整列する。日本だとぬいぐるみとかをそこに置いている人もいるのでそれに近い感じだ。
アロンとポンチョは助手席と運転席の間にお座りをし、ダイトが乗っかったのを確認してから出発。
もう運送業で慣れた道をゆっくりと、具体的には時速60kmくらいで進んでいく。
この世界に来た時はどうなることかと思ったけど日本じゃ母ちゃんが助からない見込みだったことを考えると結果オーライってやつなんだろうな。
それに美人の彼女も出来て、仕事も順調。
これ以上ないくらい良い生活が出来ていて、正直なところ日本にいる時より恵まれているかもしれない。
<わふわふ>
<あ”っあ”ー>
……まあ、妙に人間以外の生物が集まっている気がするが。今度スライム達とポンチョにお揃いの帽子を作ってもらわないとなあ。
「あ、もう国境。やっぱりトラックは速いわね」
「一度ソリッド様が説明をしているから国に入るのも問題ないし、後は薬を作ってもらうだけだな」
そして相変わらず魔物に襲われることも無く、アリーの屋敷まで到着。
屋敷の前に行くと先に気づいたジミーが先導し、庭へ入れてくれた。
「お久しぶりですヒサトラさん」
「ありがとうジミー。久しぶりだな」
「今、アリーとマトリア様を呼んで来ますよ」
そう言ってこの場を去り、程なくしてアリーとビリー、そしてマトリアさん夫妻がやってきた。
「おう、兄ちゃんたちか。今日はドラゴンがいねえんだな」
<あやつはヒサトラの家に棲んでいる訳ではないからな>
「そうかい、それじゃベヒーモスの旦那と遊ぶとしようか」
<いいだろう、最近狩りもしていないし体が鈍っているところだ>
「庭が広いからって無茶すんなよ」
ライド爺さんはダイトと遊ぶようで、俺達だけでまたあの地下室へ赴く。
「久しぶりじゃな異世界の民よ。ここへ来たということは材料が揃ったということじゃな?」
「ああ。きっちり揃えてきたぜ!」
<~♪>
<あ”ー>
「というか不思議な色のスライムが居ますね……」
「こっちはマンドラゴラ、かい……?」
アリーとビリーが不思議そうな顔で足元に居る新しい仲間に目を向けて呟く。
「ああ、素材を手に入れる時、そのままウチに住み着いたんだ。魔物だけど言うことは聞くから安心していいぜ」
<あ”!>
<!!>
「あ、可愛いかも」
アリーがマンドラゴラのポンチョを抱き上げて微笑み、ビリーは恐る恐るプロフィアを両手で持ち上げていた。
その様子を見ながらマトリアさんが口を開く。
「ふむ、ベヒーモスは意思疎通ができるから不思議ではなかったが、まさかスライムとマンドラゴラを使役するとは驚いたわい」
「使役っていうか勝手についてきただけだけどな?」
「いや、魔物は警戒心が強いのでこうやって懐くことは無いのじゃ。よほどお前さんが気に入ったのじゃろう」
「ヒサトラさんは優しいですからね」
サリアが俺の手を握って笑う。
照れくさいので話を変えておこうと、頬を掻きながら口を開く。
「そ、そんじゃ、早速これを使って薬の作成を頼むぜ! これの出来次第で母ちゃんをこっちの世界へ呼ぶ予定なんだ」
「うむ、では預かるとしよう。図鑑によると煮込みに煮込んで約ひと月かかる。そのあたりの時期にここへ来てくれるか?」
俺はその言葉に頷き了承する。
どうせ自分じゃ作れないから頼むしかねえしな。で、そのまま実験をアリーも親父さんにやるらしいから立ち会って欲しいとも。
願っても無いと俺はマトリアさんに素材を渡すのだった。